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ふぐ毒は「テトロドトキシン」と呼ばれていますが、この毒素は、明治42年(1909年)田原良純博士により命名されたものです。
また、ふぐ毒の科学構造は、昭和39年(1964年)に津田ほか多くの研究者により同時に発表され、その分子式はと決定されています。
「テトロドキシン(Tetrodotoxin)」は、 フグ科Tetradontidaeの接続形「Tetrodo」と、毒素「Toxin」を合成した用語で「ふぐ毒」を意味します。
ふぐの毒化の程度は、海域、季節、個体によって違います。「以前同じふぐを食べて大丈夫だった」からといって、次に食べた時に毒がないとは限りません。
項目
ふぐ毒の人に対する毒性
(1)致死量
人に対する最小致死量は、テトロドトキシンとして0.5〜2mg(1万分の5g〜千分の2g)です。
この毒力は、シアン化ナトリウムの約1,250倍、トリカブト毒素の約60倍の強さに相当します。
(2)食中毒の経過
ふぐ中毒は、発症経過が早いのが特徴です。
通常は、摂食後、数分から数時間内に発症し、発症までの時間が短いほど死ぬ危険が大きくなります。
ふぐ中毒の経過は次のとおりです。
ふぐ中毒の経過
経過 |
主症状 |
説明 |
第1段階 |
痺れ |
手足の痺れ、千鳥足、よく話せなくなる |
第2段階 |
運動麻痺 |
知覚麻痺がおこり、感覚がわからなくなる
運動障害がおこり、自由に動かなくなる |
第3段階 |
完全麻痺 |
体が全く動かせなくなる
ただし、意識がはっきりする時間があり、意思を伝えようとしても指も動かせない「閉じ込められた」状態に陥る
このときは、外部の話し声が聞こえているという |
第4段階 |
意識消失 |
呼吸が停止する |
死ぬまでの時間は、発症後1時間30分から数時間以内とされています。
ふぐ毒は、体内で急速に分解されるので、発症後8時間を超えれば、体内から排出され、回復に向かうと考えられています。ただし、これは適切な救急措置、摂取量等様々な条件によります。
いずれにせよ、呼吸麻痺がおこるので、人工呼吸の措置は必要です。
応急措置としては、次のものがありますが、迅速な対応が大切です。
- 直ちに救急車を呼ぶ。(ふぐ中毒であることを知らせる)
- 口に指を入れ嘔吐させ、次いで水を飲ませて利尿をうながす。
- 窒息しないように呼吸しやすい姿勢に寝かせる。症状の経過がはやい場合は救急車がくるまで人工呼吸を継続する。
ふぐ毒に関する様々な誤解
(1)小さいふぐは毒化程度が低いか
ふぐは、生息海域により毒化程度が異なります。また、当県沿岸で捕獲される「ショウサイフグ」「クサフグ」等は成魚でも15〜20cm前後で、全国的に市場流通するふぐに比べて、小さいものです。
幼魚も毒化しており、大きさは安全の目安になりません。
ふぐの毒化の程度は、海域、季節、個体によって違います。「以前同じふぐを食べて大丈夫だった」からといって、次に食べた時に毒がないとは限りません。
「プロが除毒処理をしたふぐ以外は絶対に食べない」ことがふぐ中毒を防ぐ唯一の方法です。
(2)ふぐ毒は水溶性なので、よく水洗いすれば毒は抜けるか
ふぐ毒は、毒素を貯留するTTX細胞が集合した分泌液から分泌されます。また、この分泌液は、種類により存在場所や形態が違います。
細胞内に蓄えられた毒素は外部からの操作で洗いだせるものではなく、「皮」「内臓」または「有害な筋肉」の中の毒を除去することはできません。
(3)舌にのせて、痺れなければ大丈夫か
舌にのせて毒性が判断できれば、ふぐ中毒は起こりません。
摂食中に痺れてきたら、発症時間が極めて早いということで、極めて危険な状態です。
(4)養殖ふぐならば、「肝臓」まで食べられるか
人工海水で養殖したふぐでも、毒化が認められると報告されています。
通常、養殖ふぐも人工海水ではなく海で行われており、天然のふぐと毒化程度に差はありません。
また、ふぐの肝臓は、天然・養殖の区別なく使用できません。
(5)毒にあたらない体質があるか
ふぐ毒に強い体質はありません。また、免疫になることもありません。
ふぐ中毒の際、中毒しなかった人は、幸運にも毒量の少ない部分を食べたか、食べた量が少なかったということで、体質によるものではありません。
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